07/14 11:16 UP! 女風小説 第3話 朋樹(トモキ)(55歳)

予約を入れた日。
駅で待ち合わせして、緊張しすぎて声も出ない私に、
「まりさん、こんにちは。朋樹です。来てくださってありがとうございます。お会いできて嬉しいです。
そうしたらいきましょうか。迷惑でなければ手を繋いでもいいですか?」と穏やかに頭を下げてくれ
ました。
その一言だけで、「来てよかった」と思いました。
初めての夜は、派手なことは何もなかった。
会話と、優しい手と、そっと触れられることのあたたかさに、
私のなにかが溶けていった気がしました。
あんなに「もう女じゃない」と思っていた私が、
「まだ女性でいていい」と思えた。
そんな夜でした。