08/15 11:01 UP! 30秒小説-影-秋(アキ)(27歳)
【30秒小説】
-影-
彼の慣れた歩幅は
私には少し大きい。
遅れる私に
いつも彼は、
「少し早かったね」
と、寂しげに笑って謝る。
彼は優しいから
疲れた私のためにコーヒーを淹れてくれる。
私は甘いのが好きだから
後でこっそり砂糖を入れる。
右利きの彼の家には、
左利きの鋏がある。
私が初めて来たホテルなのに、
彼は迷わず照明をつける。
彼には似合わない、
少しおしゃれな得意料理。
ガサツな彼が持ち歩く、
ピンクのエコバッグ。
私の名前を呼ぶ前に
一瞬だけ空く時間。
生理のときは私の背中を撫でて、
甘いお菓子を買ってきてくれる。
彼が着ているのを見たことがないシャツ。
私の知らない美容液。
可愛すぎるマグカップ。
知らないお店の期限の切れたポイントカード。
下がりすぎた車のサイドシート。
一人用には大きすぎるお皿。
二人で寝ても、まだ少し余るベッド。
私が「これ、かわいい」と言ったヘアゴムを見て、
彼は少し寂しそうに笑う。
「……そうだね」
重ならない私と彼の影。
彼は今、誰を見ているんだろう。
#30秒小説
-影-
彼の慣れた歩幅は
私には少し大きい。
遅れる私に
いつも彼は、
「少し早かったね」
と、寂しげに笑って謝る。
彼は優しいから
疲れた私のためにコーヒーを淹れてくれる。
私は甘いのが好きだから
後でこっそり砂糖を入れる。
右利きの彼の家には、
左利きの鋏がある。
私が初めて来たホテルなのに、
彼は迷わず照明をつける。
彼には似合わない、
少しおしゃれな得意料理。
ガサツな彼が持ち歩く、
ピンクのエコバッグ。
私の名前を呼ぶ前に
一瞬だけ空く時間。
生理のときは私の背中を撫でて、
甘いお菓子を買ってきてくれる。
彼が着ているのを見たことがないシャツ。
私の知らない美容液。
可愛すぎるマグカップ。
知らないお店の期限の切れたポイントカード。
下がりすぎた車のサイドシート。
一人用には大きすぎるお皿。
二人で寝ても、まだ少し余るベッド。
私が「これ、かわいい」と言ったヘアゴムを見て、
彼は少し寂しそうに笑う。
「……そうだね」
重ならない私と彼の影。
彼は今、誰を見ているんだろう。
#30秒小説
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